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イギリス発。家庭向けフィルムスキャナー「Knokke」が £799 で予約受付へ

イギリスの Soke Engineering が、家庭向けの 35mm フィルムスキャナー Knokke の発売準備を進めています。スキャン速度は 36 枚撮りフィルムで 3 分以内、 1 コマあたり約 2,200 万画素でスキャンできるとしています。予定価格は英国内で £799 (日本円で約 15 万円)で、公式サイトでは £200 の予約金で受け付け、12 月初めから順次出荷すると案内されています(10 月 5 日時点では予約ボタンは「Coming soon」の表示)。

出典: soke.engineering(Photo: Will Dolan)出典: soke.engineering(Photo: Will Dolan)

ハーフカメラ / 35mm / X-Pan など多様な縦横比に対応

Instagram の投稿によればホルダーは不要で、本体がフィルムを送りながらコマ間の隙間を手がかりに 1 コマずつ自動で切り出します。ロールごとにコマ間隔を測り直す仕組みで、高さが 24mm であれば縦横比は問いません。ハーフ判、通常の 35mm 判、パノラマ、XPan の横長フォーマットにもそのまま対応するとしています。

フィルムを差し込んだ Knokke。出典: soke.engineering(Photo: Will Dolan)フィルムを差し込んだ Knokke。出典: soke.engineering(Photo: Will Dolan)

スキャン中は取り込んだ画像が付属ソフトにリアルタイムで表示され、コマの検出と向きの補正、ゴミ・キズの検出もスキャンと並行して進みます。終わったらネガの反転、色補正、書き出しまで同じソフトの中で完結します。

現行の仕様には明記されていませんが、2025 年の発表時の仕様には「最小 3 コマのストリップから搬送可能」との記載があり、カット済みのネガも扱える設計のようです。

主な仕様

公式サイトに掲載されている仕様は次のとおりです。

項目仕様
対応フィルム135(35mm)のストリップ。カラー・モノクロ、ネガ・ポジとも対応。マウント済みのスライドは不可
解像度4000dpi 相当(1 コマ約 22MP)、最大 5,760 × 3,840px
センサー積層型の裏面照射(BSI)CMOS
階調48bit カラー(1 チャンネルあたり 16bit)
撮像方式RGB の 3 色を順番に照らして 1 コマを 3 回撮影する方式(トリクローム)
光源赤 680nm・緑 550nm・青 450nm・赤外線 940nm の 4 チャンネル LED
スキャン時間36 枚撮り 1 本を最高解像度・赤外線ゴミ除去込みで 3 分以内
レンズ4 枚構成
書き出しTIFF / JPEG / PNG(4000・2000・1000dpi 相当)
接続USB 3.0(5Gbps)。ドライバーのインストール不要
筐体アルミ削り出し
付属品USB ケーブル、電源、キャリングケース、マニュアル
保証1 年

3 色を別々に撮る「トリクローム」と赤外線ゴミ除去

一般的なデジタルカメラのセンサーは、画素ごとに赤・緑・青のどれか 1 色のフィルターが付いた「ベイヤー配列」で、残りの色は周囲の画素から補間しています。Knokke はこれをやめ、赤・緑・青の狭帯域 LED で順番に照らして 1 コマを 3 回撮影します。すべての画素で 3 色をそれぞれ実測するので補間が発生せず、カラーネガの 3 つの色素層を分離よく読み取れるうえ、オレンジベースも推定ではなく正確に除去できる、というのが同社の説明です。LED の波長はフィルムの色素層に合わせて選ばれています。ベイヤー補間を使わない方式自体は Frontier や Noritsu などラボのスキャナーと同じ考え方で、Knokke はそれを家庭用の大きさと価格で実現しようとしていると言えます。

もうひとつの特徴は赤外線によるゴミ・キズ除去です。カラーフィルムの色素は赤外線をほぼ透過しますが、ホコリや髪の毛、キズは透過しません。この光学的特徴を活かしたのがこの機能で、 940nm の赤外線で別に 1 回撮影し、写ったものをゴミして扱い補正する仕組みです。

赤外線によるゴミ除去自体は、ラボ機だけでなく Epson や Plustek などの家庭用スキャナーにも「Digital ICE」や「iSRD」として搭載されてきた機能です。ただし多くの機種では、赤外線のパスを加えるとスキャン時間が大きく伸びます。Knokke はゴミ除去込みで 1 本 3 分以内としており、時間の代償なしに使える点が特徴です。

付属ソフト「Korova」はミニラボの操作感を再現

Knokke には専用のスキャンソフト「Korova」が付属し、無料で配布されています。macOS・Windows・Linux 向けにプログラミング言語の Rust でゼロから書かれたネイティブアプリで、アカウント登録やサブスクリプションは不要、インターネット接続なしでスキャンから書き出しまで完結します。最新版は 9 月 28 日公開の 1.11.0 です。

Korova の補正パネル。D / C / M / Y に加えて印画紙の号数(G)を調整できる。出典: soke.engineeringKorova の補正パネル。D / C / M / Y に加えて印画紙の号数(G)を調整できる。出典: soke.engineering

ネガの反転には、カラーペーパー(RA-4)の特性カーブを模したカーブを使います。カラーネガはもともと印画紙に焼き付ける前提で設計されているため、単純に色を反転して引き伸ばすのではなく、印画紙の肩と足を通すことで、明るいハイライトが真っ白に飛ばずに粘るといいます。基準になるフィルムベースの濃度は、保存されたプロファイルを使うのではなく、そのロールのコマ間の未露光部分から毎回測ります。リバーサルフィルムはこのカーブを通さず、リニアに処理されます。

色補正のインターフェースは、富士フイルムの Frontier にならった D(濃度)・C・M・Y のキー操作に、暗室の印画紙の号数を加えたもの。1 ステップの補正量はロールが変わっても同じなので、補正内容を「レシピ」として保存して次のロールに持ち越せます。グレーの部分をクリックすると、それを中立にする補正値を計算してくれる機能もあります。ラボのオペレーターがやっていた調整を、手元で同じ感覚で再現しようとしている点は興味深いところです。

Korova は Knokke がなくてもダウンロードできます。公式サイトのサンプルスキャンのページでは、Knokke で取り込んだ RAW データ(約 12GB)を配布しており、自分の Korova に読み込んで反転や色補正、ゴミ除去を試せます(個人の非商用の評価に限る)。購入を検討しているなら、まず画質とソフトの使い勝手を確かめてみるとよいでしょう。

発表から 1 年で変わったこと

Knokke が最初に発表されたのは 2025 年 11 月です。当時の計画は 2026 年第 1 四半期に Kickstarter でクラウドファンディングを行うというもので、価格はローンチ時 999 ユーロ、最終的な小売価格は 1,599 ユーロとされていました。ベルリンの複数のラボと協力し、Fujifilm Frontier や Noritsu のスキャナーと比較検証を進めているとも説明していました。

当時の仕様と現在の仕様を比べると、中身はかなり変わっています。

項目2025 年 11 月の発表時現在(2026 年 10 月)
価格999 ユーロ(最終小売価格 1,599 ユーロ)£799(英国 VAT 込み)
販売方法Kickstarter公式サイトで予約金 £200
光源RGB LED バックライトRGB 3 色を順に照らすトリクローム + 赤外線
赤外線ゴミ除去なしあり(モノクロはソフトの Linter で検出)
36 枚撮り 1 本のスキャン時間5 分以内(4064dpi)3 分以内(ゴミ除去込み)

発表直後に話題になった海外の掲示板 Hacker News では、価格の高さに加えて「赤外線によるゴミ除去がない」「次世代のスキャンは RGB を狭帯域 LED で別々に撮る方式になるはずだ」といった指摘が出ていました。現在の Knokke はちょうどその 2 点を取り入れたうえで、スキャン時間を短くし、価格も下げた形になっています。

一方で、変わった点がもうひとつあります。2025 年当時の公式 FAQ では Korova を「完全にオープンソースにする」としていましたが、現在の配布ページに掲載されている利用規約では、Korova は「販売ではなく使用許諾」であり、改変やリバースエンジニアリングを禁じています。同社の GitHub アカウントでも、本稿執筆時点で Korova のソースコードは公開されていません。オープンソース化の方針が変わったのか、時期が後ろ倒しになっているだけなのかは、公式には説明されていません。

家庭用とラボ用、それぞれの新しいスキャナー

フィルムのデータ化の方法は、大きく分けてフラットベッドスキャナー、ラボ向けの専用スキャナー、家庭用のフィルムスキャナーの 3 つがあります(詳しくは当サイト「ネガフィルムデジタル化の3つの方法」を参照)。このうちラボの専用機は、Fujifilm Frontier や Noritsu の生産終了から長い年月が経ち、部品の確保に苦労しているのが世界共通の状況です。そこへ登場したのが、フランスの Aura Lab のラボ向けスキャナー「Aura 35」です。2025 年の上位機 Aura 35 Pro に続き、9 月には街のミニラボ向けの「Aura 35 Minilab」の受注も始まりました。

Knokke は、同じく「古い機械に頼らない新しいスキャナー」でありながら、一般家庭での利用も想定した製品です。Digital Camera World は Knokke を、デジタルカメラでフィルムを撮影する「カメラスキャン」と、Plustek などの専用フィルムスキャナーとの中間に位置する製品、つまり速くて自動化された、プロ品質のスキャンを自宅で得るための製品と位置づけています。Frontier の操作感を再現した Korova を見ると、「ラボのスキャンを自宅で」という方向性はより明確です。

日本からの購入について

Knokke は全世界に発送するとしていますが、海外からの購入になるため、故障時の修理の送り先や送料・通関手数料についても事前に確認しておくと安心です。

Soke Engineering は「フィルム写真のコミュニティのための道具を作る小さなスタジオ」を名乗る、イギリスの企業です。新しいフィルムスキャナーが、家庭用・ラボ用の両方で相次いで登場していることは、フィルム写真を続けていくうえで心強い動きです。実機のレビューが出てきたら、あらためて紹介したいと思います。

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