Aura Lab のフィルムスキャナー「Aura 35 Minilab」が出荷開始、欧米のラボで稼働が始まる
フランスの Aura Lab が、ラボ向け 35mm フィルムスキャナー「Aura 35 Minilab」の受注を開始しました。2025 年に発売された上位機 Aura 35 Pro に続く 2 機種目で、2026 年 9 月からアメリカでも販売が始まっています。
出典: imagetechdigital.com
すでにヨーロッパとアメリカの一部のラボで実際の業務に使われはじめており、長らく新品の選択肢がなかったラボ用フィルムスキャナーの市場に新しい製品が加わったことになります。
- Aura Lab unveils the Aura 35 Minilab lab-grade 35mm scanner – The Dead Pixels Society
- Aura 35 VS Noritsu: What's The Difference, And When Should You Choose – Take It Easy Lab
- The Aura Film Scanner: the future? – Analogue Wonderland
Aura 35 Minilab とは
Aura 35 Minilab は、その名のとおり街のミニラボを想定した 35mm 専用スキャナーです。Aura 35 Pro と同じ光学系を使った兄弟機で、 Aura Lab によれば「毎日ラボで動かし続けること」を前提に設計されています。メールマガジンの案内と、当サイトが入手したテクニカルデータシートによると、主な仕様は次のとおりです。
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| 対応フィルム | 35mm カラーネガ / モノクロネガ。 4 コマ単位または 1 本まるごとのバンドスキャン。ハーフ判やパノラマなど、コマ幅の制限なし |
| 解像度と光学系 | 4150dpi(24×36mm で 24MP)、最大 6144×4096px。 RGB クアッドリニア CMOS と、平面再現に最適化したアポクロマート産業用レンズを採用 |
| ダイナミックレンジ | 3.6D(72dB)、12bit サンプリング |
| 36 枚撮り 1 本のスキャン時間 | 最高解像度で 6 分未満、中解像度(3072×2048px)で約 3 分、低解像度(1536×1024px)で約 1 分 30 秒。低解像度なら 1 時間あたり約 1440 コマ。スキャン時間は、適正露出の Kodak の ISO 200 フィルムでの実測値 |
| ソフトウェア | 専用ソフト「Aura Editor」が付属。高精度なコマ検出とカラーバランスの自動提案、ゴミ除去システム(特許出願中)、JPEG から 16bit TIFF までの書き出しに対応。スキャン中に前のオーダーを編集でき、顧客情報をオーダーに紐づけてフォルダ名・ファイル名を自動で整理できる。Windows 11 で動作し、アップデートは無償 |
| メンテナンス性 | 部品は可能な限り標準品で構成され、各国の代理店経由で常時入手可能。一般的な工具で整備できる設計。組み立てと校正はフランス国内で実施 |
| 設置スペース | 本体に 73×73cm。別途 PC の設置スペースが必要 |
上位機の Aura 35 Pro とは同じ光学系・同じ筐体品質で、違いは許容されるスキャン量と Pro 専用の一部ソフトウェア機能だけとされています。The Dead Pixels Society によると Minilab のスキャン速度は Pro のおよそ 3 分の 1 で、大量処理が必要なラボには Pro が向いていると位置づけています。
出典: imagetechdigital.com
価格は公表されておらず、各国の代理店への問い合わせが必要です。参考までに、2023 年の発表時点では Aura 35 の価格は 30,000 ユーロ、あるいは 5 年間・月額約 600 ユーロのリースという構想が示されていました。
「本当に完成するのか」という懸念を乗り越えて
Aura 35 は 2023 年 10 月に構想が発表されました。パリで 6 軒のラボを運営する Nation Photo の Maximilien Steinberg 氏が Adrien Veau 氏率いる若いエンジニアチームとともに 5 年かけて開発したもので、「従来のミニラボスキャナーの 60〜80 倍速い」という触れ込みでした。 Nation Photo が所有する Fujifilm Frontier や Noritsu HS シリーズとスキャン結果を突き合わせながら、ハードウェアとソフトウェアのチューニングが進められていました。
2023 年、開発発表当時の 3D レンダリング。出典: Aura Labs
ただ、当時は公開されたのが 3D レンダリングだけだったこともあり、 海外のフォーラム では「実機の写真すらない」「ラボ用途に耐えるソフトウェアを作れるのか」といった懐疑的な声が少なくありませんでした。フィルム業界では新製品の発表が出荷まで至らない例も珍しくなく、こうした反応は無理もないものでした。
一方で、現場のラボからは強い期待の声も上がっていました。イギリスのフィルム販売店で自社ラボも運営する Analogue Wonderland は、開発チームと会ったうえで次のように書いています。
この機械を作っているチームに、私はとても感銘を受けました。彼らは何年もこれに取り組んでおり、現代の商業ラボが何を必要としているかも、自分たちが使っている技術も、深く理解しています。(中略)技術革新と仕上がりの両面で、私たちのラボの設備を一気に 20 年分前進させうるのです。
— The Aura Film Scanner: the future? – Analogue Wonderland (筆者訳)
初期の実働プロトタイプ。出典:Aura Labs
それから約 3 年。 Aura 35 Pro は 2025 年初めに発売され、現在はヨーロッパとアジア太平洋の 10 市場およびアメリカで販売されています。ドイツ語圏では現像用品メーカーの JOBO が 2025 年 9 月から代理店となり、アメリカでは ImageTech LLC が取り扱っています。イギリスの Take It Easy Lab は約 1 年前から Aura 35 を業務で稼働させ、Noritsu との比較記事 を公開しています。「Aura のスキャンはなぜフラットに見えるのか」という問いに、同ラボはこう答えています。
Aura はネガから可能な限り多くの情報を取り出すために、意図的にフラットな仕上がりを目指して開発されました。スキャナーはクリエイティブな判断を勝手に下しません。自分で調整する余地が広いということです。あまり編集せずにそのまま共有できる仕上がりを求めるなら、Noritsu のほうが好みかもしれません。
— Aura 35 VS Noritsu: What's The Difference, And When Should You Choose – Take It Easy Lab (筆者訳)
構想段階の製品が、懸念をひとつずつ解消しながら実際に市場へ投入され、ラボの現場で稼働している。これは、生産終了から年月の経った Fujifilm Frontier や Noritsu のスキャナーを使い続けてきた世界中のラボにとって喜ばしいニュースだと思います。Steinberg 氏自身も「保証はとうに切れ、部品も入手しづらくなり、スキャナーがいつ止まるかと胃を痛めているラボを数多く見てきた」と語っています。
実際に Aura Lab を訪ねてみて
筆者は以前、フランスの Aura Lab を実際に訪問する機会がありました。印象的だったのは、ハードウェアとソフトウェアのそれぞれに、その分野を本職とする専任のエンジニアがいたことです。小さな会社でありながら、光学・機構の設計にもソフトウェアの開発にも専門家が腰を据えて取り組んでいました。ラボ用スキャナーは筐体や光学系だけでなく、日々のオペレーションを支えるソフトウェアの完成度が重要です。Aura Editor が「スキャン中に前のオーダーを編集する」といった現場目線の機能を備えているのは、この体制があってこそだと感じました。
Aura 35 Minilab の動作イメージ。Aura Labs の紹介動画より抜粋
もうひとつ評価したいのが、部品選定の考え方です。Aura 35 は基本的にデジタルカメラの仕組みでフィルムを撮影する方式で、可能な限り標準品を使い、特殊な工具なしで整備できるよう設計されています。専用部品の供給が止まった瞬間に修理不能になる、という旧来のミニラボ機の弱点を最初から避けようとしている点は、長く使う機材として大きな安心材料です。
日本での入手について
2026 年 9 月時点で、日本には Aura Lab の正規代理店がまだありません。アジア太平洋地域では香港やオーストラリアに代理店がありますが、日本のラボが導入するには自力で海外の代理店と交渉する必要があるのが現状です。
日本でも Frontier や Noritsu の老朽化と部品の枯渇はラボ共通の悩みです。日本国内に正規の販売・サポート網ができれば、フィルム現像ラボの持続性という点で大きな前進になるはずです。今後の展開に注目していきます。



