有効回答数が 1.7 倍に増加 - フィルム写真に関する実態調査 2025 調査結果
1. はじめに
FilmFocusでは、2025年11月30日から12月31日にかけて「フィルム写真に関する実態調査2025」を実施しました。調査はオンラインのアンケートフォームを用いて行い、合計1,359件の回答がありました。このうち重複が疑われる回答を除外した1,337件を有効回答として集計しています。有効回答数は昨年の802件から約1.7倍に増加しました。本レポートは、調査結果を統計データとして整理し、昨年の調査結果との比較・考察を加えたものです。
なお、公開に先立ち、外部より重複回答の可能性についてご指摘をいただきました。検証の結果、同一回答者による重複が疑われる22件を除外しています。データの検証と精査に時間をかけたため、本レポートは当初の予定より遅れての公開となりました。ご指摘をくださった方、そして公開を楽しみにお待ちいただいた皆様に感謝申し上げます。
また、回答にご協力いただいた皆様、アンケートについて発信・拡散いただいた皆様、調査に関するアドバイスを頂戴した皆様に厚くお礼申し上げます。
あわせて、本調査にご協賛いただいたナニワグループ様に、心より御礼申し上げます。
2. 調査背景
FilmFocusでは2024年に第1回の「フィルム写真に関する意識調査」を実施し、国内のフィルムユーザーの実態を報告しました(フィルム写真に関する意識調査2024 結果レポート)。国内では広くアクセスできる定点観測的なフィルム写真に関する調査が存在しないという状況は現在も変わっていません。今回は2回目の調査として、昨年と同一の設問を軸に据えつつ、現像ラボの選び方などの新しい設問を追加しました。2年分のデータが揃ったことで、フィルム写真を取り巻く環境の変化を経年で確認できるようになっています。
3. 調査結果サマリ
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フィルムユーザーの利用実態は昨年から横ばいとなりました。35mmフィルムの使用者は概算で年間平均13.9本(昨年13.7本)、120フィルムは7.0本(同6.9本)を使用しており、現像方法の分布(ラボ67%・併用25%・自家現像8%)も昨年とほぼ同一でした。(調査結果4-5、4-10)
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使用ブランドではKodakが71%となり、昨年1位のFujifilm(68%)を逆転しました。主要ブランドの利用率は軒並み低下し、今回から選択肢に追加したKentmere(16%)などのブランドに分散しています。1年間に使用したブランド数の平均は3.0から2.2に減少しました。(調査結果4-7)
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この1年でフィルムを使う頻度が「増えた」人は28%で「減った」人の26%をわずかに上回り、昨年(増30%・減27%)と同じ構図でした。ただし使用歴別に見ると、使用歴1年未満では「増えた」が49%に上る一方、10年以上では「減った」が40%と、新規層とベテラン層の二極化が見られます。減った理由は今年も「コスト」が62%で最大でした。(調査結果4-6)
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新設問となる現像ラボ選びの重視要素では「現像・スキャンの品質」を1位に挙げた人が41%で最多となり、「価格」(24%)、「場所」(20%)を上回りました。(調査結果4-11)
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フィルムユーザーの価値観スコアは、7項目すべてで昨年から±0.2以内の変動に収まりました。フィルムコミュニティの気質は1年を経ても安定しています。(調査結果4-9)
4. 調査結果
4-1. フィルム写真を始めたきっかけ
昨年同様、経験年数によって大きく異なる傾向が見られました。過去1年以内にフィルム写真を始めた人では「インターネット・SNS」(36%)が最も多く、「友人・サークル」(27%)が続きます。経験年数10年以上のグループでは「選択肢がフィルムしかなかった」が41%で最多となり、この構図は昨年と共通です。
なお、今回の調査では自由記述での回答が全体の約2割を占めました(図では「その他」に含む)。自由記述には「祖父の遺品のカメラ」「PENTAX 17の発売」「オールドレンズの延長」「デジタルに飽きた」といった多様なきっかけが寄せられており、家族の形見や新製品の発売が入口になっている様子がうかがえます。
図1: 経験年数別・フィルム写真を始めたきっかけ(単一回答)
4-2. フィルム写真の好きなところ
複数回答で尋ねた結果、全体では「フィルム特有の写真の見た目が好き」(58%)、「フィルムカメラの特徴が好き」(53%)、「写真ができるまでのワクワク感」(52%)が上位となりました。昨年と同じく、経験年数が増えるにつれて「現像・プリントの楽しさ」を挙げる人の割合が増え(1年未満14%→10年以上40%)、フィルムを続けるうちに現像・プリントという楽しみを「発見」していく過程が今年も確認できました。
一方、「デジタルな世界から離れるきっかけ」は経験の浅い層ほど高く(1年未満22%・10年以上10%)、こちらも昨年と同様の傾向です。
図2: 経験年数別・フィルム写真の好きなところ(複数回答)
4-3. フィルム写真に関する情報収集方法
「SNS」(66%)が経験年数を問わず最もよく利用される情報源である点は昨年と変わりません。「メーカー・ブランド以外のウェブサイト」(39%)、「メーカー・ブランドのウェブサイト」(30%)が続きます。昨年見られた「経験10年以上ではメーカー公式サイトが非公式サイトを逆転する」という現象は、今年は公式34%・非公式36%とほぼ拮抗する形になりました。
図3: 経験年数別・フィルム写真に関する情報収集方法(複数回答)
4-4. 過去1年間に使ったフィルムの種類
今回から、使用したフィルムの種類(現像プロセス別)を尋ねる設問を追加しました。カラーネガ(C-41)の82%に続き、白黒フィルムが61%と高い使用率を示しました。カラーフィルムの値上がりが続く中で、比較的安価な白黒フィルムが多くのユーザーの選択肢に入っていることがわかります。リバーサル(E-6)は28%、映画用フィルム(ECN-2)は7%でした。
図4: 過去1年間に使ったフィルムの種類(複数回答)
4-5. 過去1年間に使ったフィルムのフォーマットと本数
過去1年間に使用したフィルムのフォーマットと本数を尋ねたところ、回答者の95%が35mmフィルムを、53%が120フィルムをそれぞれ1本以上使用していました。使い捨てカメラは18%、シートフィルムは10%でした。
回答結果から概算すると、フィルムユーザーが1年間に使用する平均本数は35mmフィルムが約13.9本、120フィルムが約7.0本となり、昨年(35mm約13.7本・120約6.9本)からほぼ横ばいでした。年間50本以上を使うヘビーユーザーの割合も35mmで6%と昨年と同水準です。値上げが続いているにもかかわらず、フィルムを使い続けている層の使用量は落ちていないことがわかります。
図5: 過去1年間に使ったフィルムのフォーマットと本数
4-6. フィルムを使う頻度の変化・理由
過去1年間でフィルムを使う頻度が「増えた」と答えた人は28%、「減った」と答えた人は26%でした。昨年(増30%・減27%)に続き、わずかながら「増えた」が上回る結果となっています。
図6: フィルムを使う頻度の変化(2024年調査との比較)
ただし使用歴別に見ると様相は大きく異なります。使用歴1年未満では「増えた」49%・「減った」6%であるのに対し、10年以上では「増えた」15%・「減った」40%でした。新しくフィルムを始めた層が使用量を伸ばす一方、長く続けてきた層ほどコスト増の影響を受けて使用を控えている構図がうかがえます。
自由回答で理由を尋ねたところ、増えた理由として最も多かったのは昨年と同じく「新しいカメラの購入・入手」(19%)で、「楽しさへの熱中」「最近始めた・再開した」(各14%)が続きました。一方、減った理由は今年も「コスト」(62%)が他を大きく引き離しています(昨年は70%)。
4-7. 過去1年間に使ったフィルムのブランド
複数回答で、過去1年間に使用したフィルムのブランドを尋ねました。今年はKodak(71%)がFujifilm(68%)を上回り、昨年調査から首位が入れ替わりました。イルフォードは41%、ロモグラフィは30%、シネスチルは12%でした。また、今回から選択肢に追加したKentmere(ケントメア)は16%と、シネスチルを上回る利用率を示しました。
図7: 経験年数別・過去1年間に使ったフィルムのブランド(複数回答)
昨年の調査結果と比較すると、主要ブランドの利用率は軒並み低下しています(Fujifilm 84%→68%、Kodak 81%→71%、Ilford 52%→41%、Lomography 38%→30%)。また、主要5ブランドでカウントした1年間の使用ブランド数の平均は3.0から2.2に減少しました。
図8: 過去1年間に使ったフィルムのブランド(2024年調査との比較)
相次ぐ値上げの中で、ユーザーがさまざまなブランドを試すことを控え、自分の定番となる少数のフィルムに絞り込んでいる可能性が考えられます。C-41と比べると廉価であることが多い白黒フィルムの利用率の高さも、この文脈で読み取ることができます。
図9: 経験年数別・過去1年間に使ったフィルムブランドの数
4-8. フィルムカメラの所有台数
フィルムカメラの所有台数の分布は昨年とほぼ同一で、「2-5台」(43%)が最多、「10台以上」も26%を占めました。経験年数が長いユーザーほど多くのカメラを所有する傾向も変わらず、10年以上のグループでは42%が10台以上を所有しています。概算での平均所有台数は、1年未満の約3.7台に対して10年以上では約9.3台でした。
図10: 経験年数別・フィルムカメラの所有台数
4-9. フィルムユーザーの価値観
昨年と同じく、フィルムユーザーの価値観を10段階のリッカート尺度で尋ねました。平均スコアは「あれこれ調べるのが好き」(7.6)、「技術的な側面が好き」(7.5)、「アーティスティックな側面が好き」(7.1)、「サブカルチャーであり続けてほしい」(7.0)が上位で、7項目すべてが昨年から±0.2以内でした。
今回から追加した「写真はビジネスの手段である」は平均1.5と際立って低く、回答者の大多数にとってフィルム写真が純粋な趣味・表現活動であることが確認できました。
図11: フィルムユーザーの価値観・平均スコア
相関分析の結果も昨年と同様の構造を示しました。「調べるのが好き」な人は「技術的」な側面への関心が高く(相関係数0.53)、「お勧めする」人は外交性・コミュニティ志向も高い傾向があります。
図12: フィルムユーザーの価値観・相関分析
4-10. フィルムの現像方法
過去1年間の現像方法を尋ねたところ、すべてラボに依頼する人が67%、ラボと自家現像を併用する人が25%、すべて自分で現像する人が8%となり、昨年(67%・26%・7%)からほぼ変化がありませんでした。経験年数が長くなるにつれて自家現像の割合が増える傾向も昨年と共通です。
※今回の調査では現像方法を複数回答で尋ねたため、昨年の単一回答の区分に合わせて再集計しています。
図13: 経験年数別・フィルムの現像方法
4-11. 現像ラボを選ぶときに重視する要素
今回から、現像ラボを選ぶ際に重視する要素を順位付けで尋ねる設問を追加しました。1位に選ばれた割合は「現像・スキャンの品質」が41%で最多となり、「価格」(24%)、「場所」(20%)が続きます。平均順位で見ても品質(2.2位)が価格(2.6位)を上回り、コスト意識が強まる中でも、ユーザーがラボに最も求めているのは仕上がりの品質であることがわかりました。
また、「好きな現像ラボ」を尋ねる自由回答には510件の回答が寄せられ、全国のラボ・写真店の名前が数多く挙げられました。地域のラボが厚い支持を得ている様子がうかがえます。
図14: 現像ラボを選ぶときに重視する要素
4-12. デモグラフィック
調査参加者のデモグラフィックは以下の通りです。括弧内は各設問の回答者に占める割合です(デモグラフィック設問は任意回答のため、回答数は約1,090件です)。
有効回答数合計: 1,337人(2024年調査: 802人)
フィルム写真の経験年数
- 〜1年: 179人(13.4%)
- 1〜3年: 247人(18.5%)
- 3〜5年: 194人(14.6%)
- 5〜10年: 229人(17.2%)
- 10年〜: 484人(36.3%)
居住地方
- 関東: 618人(57.0%)
- 近畿: 148人(13.6%)
- 中部: 100人(9.2%)
- 北海道: 69人(6.4%)
- 九州・沖縄: 47人(4.3%)
- 東北: 26人(2.4%)
- 北陸: 26人(2.4%)
- 中国: 26人(2.4%)
- 海外: 13人(1.2%)
- 四国: 12人(1.1%)
年代
- 10代: 31人(2.9%)
- 20代: 231人(21.3%)
- 30代: 274人(25.2%)
- 40代: 188人(17.3%)
- 50代: 236人(21.7%)
- 60代: 113人(10.4%)
- 70代以上: 13人(1.2%)
昨年と比較すると、経験年数10年以上の割合が31.5%から36.3%へ、50代以上の割合が26.8%から33.3%へと増えており、今回の調査ではベテラン層・上の年代の参加が広がりました。地域の分布は昨年とほぼ同一です。経験年数別の集計を主軸としている本レポートの構成上、全体値の年次比較にあたっては回答者構成の変化も考慮する必要があります。
5. 調査結果を受けて
5-1. コストの逆風は続くが、ユーザーは「使い続ける工夫」で適応している
昨年に続き、フィルムを使う頻度が減った理由の第1位は「コスト」(62%)でした。2025年も値上げの流れは止まらず、富士フイルムは6月に写真フィルムの国内価格を改定し、カラーネガフィルムで約2割、リバーサルフィルムでは3〜5割の値上げとなりました(富士フイルムイメージングシステムズ)。また、イーストマン・コダック社は2025年8月の決算報告で資金繰りへの懸念を表明し、大きく報道されました(日本経済新聞)。同社のフィルム事業自体はコダック・アラリスとの供給契約が2028年まで更新されており、直ちに供給が途絶える状況ではありませんが、フィルム価格の先高観は今年も変わっていません。
一方で今回の調査からは、ユーザーがコスト増に「適応」している様子が読み取れます。使用ブランド数を絞り込む(平均3.0→2.2)、廉価なKentmereや白黒フィルムを活用する(白黒使用率61%)、自家現像を取り入れる(自家現像経験33%)といった行動の結果、1人あたりの年間使用本数(35mm約14本)は昨年から落ちていません。「やめる」のではなく「使い方を変えて続ける」といったフィルムユーザーの行動特性が示唆されます。
5-2. 新しいカメラと新しいフィルムが、確かに人を動かしている
頻度が増えた理由の第1位は今年も「新しいカメラの購入・入手」(19%)でした。自由回答には「PENTAX 17を購入したので」「PENTAX 17の発売」といった具体的な機種名への言及が複数あり、2024年夏発売の新機種が実際に新規参入と使用量増加のきっかけとして機能しており、その効果が1年以上持続していることが確認できます。
2025年も新機種・新サービス登場の流れは一部で続き、Lomographyが同社初のオートフォーカス搭載コンパクト「LOMO MC-A」を発売した(Kosmo Foto)ほか、MiNT Cameraの「Rollei 35AF」も流通が本格化しました。
フィルム自体の新製品も相次ぎました。HARMANは5月に新しい白黒フィルム「Kentmere Pan 200」を(PetaPixel)、7月にはカラーネガの改良版「Phoenix II」を発売しています(Kosmo Foto)。今回の調査でKentmereが16%という利用率を示したことは、こうした「新しくて安価な選択肢」への需要の大きさを裏付けています。また、富士フイルムが「写ルンです」と同じ画角を持つハーフサイズ「デジタル」カメラ「X half」を発売した(富士フイルム)ことは、フィルム的な撮影体験そのものが一つの市場として認知されていることを示す出来事でした。
5-3. 現像インフラはフィルム体験の生命線になりつつある
今回新設したラボ選びの設問では、「現像・スキャンの品質」を最重視する人が41%と、「価格」(24%)を大きく上回りました。値上げが続く状況でもなお、ユーザーはラボに価格より品質を求めています。「好きな現像ラボ」には510件もの回答が寄せられ、特定のラボへの愛着・信頼が数多く語られました。フィルム体験の満足度が「撮影後」の工程に大きく依存していることの表れと言えます。
一方で、頻度が減った理由には「近所のラボの廃業」「現像に出す手間」を挙げる声もありました。経験年数が長い層ほど自家現像率が高い(10年以上では38%が自家現像を経験)という結果は、ベテランの楽しみ方であると同時に、ラボ網の縮小への適応という側面も持っています。ユーザーがラボに求めるものが明確になった今回の結果が、現像サービスに関わる方々の参考になれば幸いです。
6. 次回調査のお知らせ
「フィルム写真に関する調査2026」は、今年も11月に開始する予定です。2年間の調査を通じて、回答数の広がりがそのまま調査の解像度につながることを実感しています。次回も回答へのご協力、そしてSNSなどでの拡散にお力添えいただけますと幸いです。調査開始の際はFilmFocusのウェブサイトおよびSNSでお知らせします。
7. 調査実施者プロフィール・問い合わせ先
調査実施者: 森川 公康 (Kimiyasu Morikawa)
スタートアップのCTO、外資系コンサルティングファームでの勤務などを経て、2023年よりニューヨーク在住。ニューヨーク公共図書館 (New York Public Library) でTechnical Team Leadを務め、フィルムを含む歴史資料のデジタルアーカイブおよび検索システムの開発プロジェクトを率いる。その傍ら、現地のフィルム現像ラボでも活動。早稲田大学政治経済学部卒。Georgia Institute of Technology コンピュータサイエンス修士課程在籍中。
連絡先: kimiyasu.morikawa [at] gmail.com